久留米絣とは

About kasuri久留米絣とは

久留米絣は、福岡県久留米市を中心とした地域で生産される、伝統的な木綿の織物です。通気性が良く、夏は涼しく、冬は暖かい特徴があり、季節を問わず快適に着ることができます。さらに、着るほどに肌になじみ、柔らかな手触りが心地よく、長く愛用するほど風合いが増していくのが魅力です。 久留米絣の最大の特徴は、織りの技法によって生まれる“ゆらぎ”や“にじみ”の美しさ。これらは、プリントでは表現できない独特の趣を持ち、手織りならではの温かみを感じさせます。柄や色の変化によって、さまざまな表情を見せるため、飽きが来ず、長く楽しむことができます。 また、久留米絣は小幅で織られるため、緯糸にかかる張力が少なく、木綿本来の柔らかさがしっかりと保たれています。この特徴が、着る人に安心感を与え、日常生活の中で寄り添ってくれる存在となっています。生地は、綿糸を使用し、繊維加工をせずに水洗いと天日干しで仕上げられるため、自然な風合いと手触りが楽しめます。 久留米絣は、作り手の思いや風土が織り込まれており、その美しさや心地よさは、時間が経つごとに深まります。洗うほどに美しさが増すこの織物は、現代の生活にもぴったりな、長く愛され続ける伝統工芸品です。

History久留米絣の歴史

久留米絣の歴史は、福岡県南部の筑後地方で220年もの間、続いてきました。その物語は、決して史実には載らない、多くの名もなき人々の手によって紡がれたものです。庶民の手仕事が生んだこの織物は、地元の人々の生活の中で育まれ、時代を超えて今も愛され続けています。 すべては、12歳の少女、井上伝のひらめきから始まりました。伝は農家の娘で、ある日、自分の衣服に現れた白い斑点に気付きます。その瞬間、彼女は糸を解き、試行錯誤を重ねながら、防染技法「括り」を発明しました。この技法を使って糸を染めたことで、織物の表面に白い点が散らばる模様が生まれ、それが久留米絣の最初の柄となったのです。 井上伝が久留米絣を創り出したのは1799年頃と伝えられており、その技法は弟子たちによって広まり、1000人以上がこの技術を学びました。中でも約400人は各地に散らばり、織物業を始め、久留米絣の名は広がっていきました。 筑後地方は、筑後川と肥沃な大地に恵まれ、綿花や藍の栽培が盛んでした。この土地ならではの風土が、久留米絣の発展を支えました。農閑期に、農家の人々は副業として絣を織り、町中に機の音が響き渡ったと言われています。地元の人々は、長い歴史の中で絣の技術を磨き、育ててきました。 最盛期に比べると、現在の織物業は少数派となりましたが、福岡県筑後市、広川町、八女市周辺には今も機屋が立ち並び、伝統は息づいています。特筆すべきは、久留米絣が常に進化を続けていることです。時代の変化に応じて、色や柄、風合いを変えながらも、伝統の技法を守り続けています。 久留米絣は、手工業の趣を失わず、木綿本来の風合いを生かした美しさが今も息づいています。父母から子へ、受け継がれてきた技術は、これからも新たな世代に伝えられていくでしょう。